Nodiのメッシュレス解析 (Immersed FEM) について

Nodiのデスクトップ版では、モデリングした形状に対してノードエディタ上から直接解析(CAE)を実行できます。 この解析機能の中核となっているのが、メッシュレス解析(Immersed FEM: 埋め込み境界有限要素法) です。

Nodi上での解析結果の可視化
Nodi上での解析結果の可視化

この記事では、メッシュレス解析の仕組みと、Implicitモデリングとの相性、 構造・流体・熱の解析例、そして応用としてのトポロジー最適化までを紹介します。

Nodiでサポートしているメッシュレス解析(Immersed FEM)

Nodiの解析ソルバは、形状の 陰関数表現(SDF: Signed Distance Function) に基づく3次元FEMソルバです。 一般的なFEMソルバと大きく異なるのは、解析対象の形状に合わせたメッシュを作らないことです。

仕組みを大まかに説明すると、次のようになります。

  1. 解析対象の形状を包む直方体領域に、等間隔の構造格子(8節点六面体要素) を自動生成する
  2. 形状は符号付距離場(SDF) として各格子節点にサンプリングされ、「どこまでが形状の内側か」を距離値として保持する
  3. 形状の表面で切られた要素は、内側の領域だけを考慮して計算する
  4. 境界条件(固定・荷重・温度など)は、メッシュの節点ではなく、形状表面を覆うように置いた面や領域に対して与える

構造格子に形状を埋め込むImmersed FEMの概念図
構造格子に形状を埋め込むImmersed FEMの概念図

つまり、形状(SDF)と計算格子(構造格子)が完全に分離されており、ユーザーがメッシュを切る工程が存在しません。 このようなアプローチは、一般に Immersed FEM / 埋め込み境界法(Immersed Boundary Method)/ CutFEM などと呼ばれます。1

背景: 古典的なFEM解析におけるメッシングの問題

従来のFEM解析では、解析に先立って形状の境界に適合した(conformalな)メッシュを作成する必要があります。 そして実務でCAEに触れたことのある方ならご存知の通り、このメッシング工程こそが解析ワークフロー最大のボトルネックです。

  • メッシュ品質が解析精度を左右する: 歪んだ要素・アスペクト比の悪い要素は精度や収束性を悪化させるため、フィレットや薄肉部などの局所形状に合わせた丁寧なメッシュコントロールが必要になる
  • 前処理としてのCADクリーンアップ: メッシャに形状を通すために、微小面の除去といった形状修正が必要になることが多い
  • 設計変更のたびにメッシュを作り直す: 形状を少し変えるだけでもリメッシュが必要で、設計と解析のイテレーションを回す上で大きなボトルネックになる

さらに、DfAM(積層造形向け設計)の文脈ではこの問題が深刻化します。 TPMSラティスのような複雑な内部構造を持つ形状は、そもそも境界適合メッシュを切ること自体が現実的に困難です。 仮にメッシュが切れたとしても、要素数が爆発してしまい、設計ループの中で気軽に解析を回すことはできません。

conformalメッシングが困難な形状の例
conformalメッシングが困難な形状の例

メッシュレス解析(Immersed FEM)は、この問題を根本から回避します。 背景格子は形状と無関係な等間隔の直方体格子なので、形状がどれだけ複雑でも格子生成が失敗することはなく、 解析を実行することができます。

Implicitモデリングとの相性の良さ

Nodiでは、以前の記事で紹介したImplicitモデリングをサポートしています。 Implicitモデリングでは形状を陰関数(SDF)として表現しますが、これはメッシュレス解析と極めて相性の良い組み合わせです。

なぜなら、Immersed FEMが形状に求める情報は 「空間上の点が形状の内側か外側か(境界までどれだけ離れているか)」 であり、 これはImplicitモデリングの形状表現(SDF)がそのまま答えられる問いだからです。

  • Implicitモデリングで作った形状は、メッシュ化を挟まずに解析の入力になる(メッシュ化や修復の中間工程が存在しない)
  • TPMSラティスや多孔質構造のような、メッシュを切ることが非現実的な形状もそのまま解析できる

このようなImplicitモデリングとImmersed FEMの特性が、ノードグラフによるプロシージャルなワークフローの中で組み合わさることで、 設計→解析のループを高速に回すことが可能になります。

ImplicitモデリングからシームレスにつながるImmersed FEM解析パイプライン

上の例のように、形状の生成から解析条件の設定、解析の実行、結果の可視化までが1つのノードグラフとして完結し、 パラメータを変更すればそのまま再解析が走ります。

解析の例

Nodiの解析ソルバは、同じ入力形式・同じ格子の上で複数の物理を切り替えて解くことができます。 ここでは代表的な3つの解析タイプを紹介します。

1. 構造解析

構造解析としては、現状は線形弾性体の静解析をサポートしています。剛性方程式 Ku=fKu = f を解き、変位・応力・ひずみを出力します。

境界条件は面を指定して与えます。

  • 固定: 指定した面上での変位拘束
  • 荷重: 面に与える力、法線方向の圧力、軸まわりのモーメント(ねじり・曲げ)、重力などの体積力

構造解析の例: von Mises応力の可視化
構造解析の例: von Mises応力の可視化

解析結果はそのままノードグラフ上で参照できるため、 「応力の高い領域だけラティスの密度を上げる」といった、解析結果に基づく形状制御(フィールドドリブンな設計) に直結します。

2. 流体解析

定常・非圧縮のNavier–Stokes方程式を解く流体解析もサポートしています。

ここでも「メッシュを切らない」方針は共通で、SDFの内側がそのまま流体領域となり、 流入・流出の開口を面で指定するだけで解析を始められます。

流路の圧力損失や速度分布の評価に加え、共役熱伝達(後述の熱解析と組み合わせた熱流体解析)にも対応しています。

流体解析の例: 流路内の速度場
流体解析の例: 流路内の速度場

3. 熱解析

定常熱伝導解析では、温度固定・熱流束・対流(熱伝達)といった境界条件を面で与え、温度分布を求めます。 さらに、得られた温度場を熱ひずみ荷重として構造解析へ受け渡す熱応力解析もサポートしており、 温度差によって形状がどう変形し、どこに応力が生じるかまでを一度の解析で評価できます。

以下は熱応力解析の例です。穴の開いた板の中央部を加熱し、両端を低温に固定した条件で温度分布を解き(下)、 その温度場による熱膨張で板が変形する様子を可視化しています(上)。

熱応力解析の例: 温度分布(下)と、熱膨張による変形(上)
熱応力解析の例: 温度分布(下)と、熱膨張による変形(上)

このほか、流体解析と連成させて「発熱する固体を流路の冷却材が冷やす」状況を解く熱流体解析(共役熱伝達) にも対応しています。 放熱部品やヒートシンク、冷却流路を持つ金型・熱交換器など、AMが得意とする熱設計領域とも直結する解析メニューです。

メッシュレス解析の精度について

「メッシュを切らずに解析して、精度は大丈夫なのか?」という疑問は自然なものです。

Nodiのソルバでは、境界付近の精度を保つための安定化手法を組み込んだ上で、 解析解のあるベンチマーク問題との比較検証を行っています。

代表例として、自重で変形する片持ち梁(鋼材を想定した角柱)の先端たわみを、 Euler-Bernoulli梁理論による理論値 2.260×104m-2.260 \times 10^{-4}\,\mathrm{m} と比較した結果が以下です。

格子分割要素数先端変位 uzu_z [m]理論値との差
80 × 4 × 41,280−2.177e-43.65%
160 × 6 × 65,760−2.230e-41.31%
240 × 8 × 815,360−2.243e-40.76%
320 × 10 × 1032,000−2.247e-40.54%

格子を細かくするほど誤差は単調に減少しており、解像度を上げることで精度を担保できることがわかります。 つまり、粗い格子で素早く傾向を掴み、確認したいところで解像度を上げるという使い分けが、 1つのパラメータの調整だけで行えます。 また、同じ問題を従来型のFEM入力(節点・要素を明示的に与える方式)で解いた結果とも実質的に一致しており、 流体解析についても、矩形ダクトの発達流れの標準ベンチマークで、圧力勾配・中心線速度とも解析解に対して1%未満の誤差を確認しています。

トポロジー最適化

メッシュレス解析のもう1つの大きな応用が、トポロジー最適化です。

トポロジー最適化は「与えられた設計空間・境界条件・体積制約の下で、最適な材料配置を計算で求める」手法です。 一般に固定格子の上で材料分布を更新しながら解かれるため、固定した背景格子に形状を埋め込むImmersed FEMとは相性が良く、 通常の解析のセットアップ(格子・境界条件)をそのまま最適化のループに流用できます。

最適化の結果得られた密度場などは、Implicitモデリングの入力としてそのまま活用することができ、 後加工(シェル化・ラティスの制御)に容易に繋げることができます。

1. 構造のトポロジー最適化

構造分野では、体積制約付きのコンプライアンス(変形しにくさ)最小化を基本としたトポロジー最適化をサポートしています。

以下はブラケットの例です。四隅のボルト固定部を拘束し、上部の2つの穴に荷重を与えた条件で、 体積制約の下でコンプライアンスを最小化しています。 荷重点から固定部へ力を受け流す有機的な枝状の構造が自動的に形成され、 得られた形状の応力分布もそのまま確認できます。

コンプライアンス最小化によるブラケットのトポロジー最適化の例
コンプライアンス最小化によるブラケットのトポロジー最適化の例

コンプライアンス最小化のほかにも、以下のような目的関数・拘束条件に対応しています。

  • 最大応力の最小化: 応力集中を抑えることを目的とした形状探索
  • 放熱経路の最適化: 発熱部から冷却面へ熱を運ぶ樹枝状の高熱伝導経路を形成

2. 熱流体のトポロジー最適化(WIP)

現在開発を進めているのが、熱流体(冷却流路設計)のトポロジー最適化です。

これは、先ほど紹介した熱流体解析(共役熱伝達)を状態方程式として、 「発熱する固体を効率よく冷やす流路の形」そのものを最適化で求めるものです。 圧力損失(ポンプ動力)と冷却性能はトレードオフの関係にあるため、 体積や圧力損失の制約の下で温度を最小化する、といった定式化で流路ネットワークを設計します。

温度最小化による冷却流路のトポロジー最適化(開発中につきParaViewでの可視化結果)
温度最小化による冷却流路のトポロジー最適化(開発中につきParaViewでの可視化結果)

社内の検証では、単純な矩形の設計領域から出発して、 入口と出口を結びながら発熱領域へ枝を伸ばす葉脈状に分岐した流路網が自動形成されることを確認しています。

この機能はまだ開発中(WIP)ですが、金型の水管設計やパワーエレクトロニクスの冷却、 熱交換器のような流路形状が性能を決める製品への応用を見据えています。 AMでしか作れない自由な流路形状と、それを設計できる最適化を組み合わせることで、 DfAMのワークフローを解析側からも支えていく予定です。

まとめ

Nodiがサポートするメッシュレス解析(Immersed FEM)を紹介しました。

  • メッシュを切らない: 形状はSDFとして背景の構造格子に埋め込まれ、メッシング工程そのものが存在しない
  • Implicitモデリングと直結: ラティスのような複雑形状も、モデリング結果をそのまま解析へ渡せる
  • トポロジー最適化への展開: 構造の最適化に加え、熱流体(冷却流路)の最適化も開発中

形状設計と解析の間にあったメッシュを切るというボトルネックをなくすことで、 設計のループを高速に回すことができるようになります。

Nodiのデスクトップ版に興味のある方は、ぜひwaitlistにご登録ください。 解析機能へのフィードバックやコラボレーションのご相談もお待ちしています。

Footnotes

  1. 境界に適合しない背景格子上で解析を行う手法の総称として、Immersed FEM、Fictitious Domain法、CutFEM、Finite Cell Methodなど様々な呼び方があります。本記事ではまとめて「メッシュレス解析(Immersed FEM)」と呼びます。なお「メッシュレス」は、ユーザーがメッシュを用意する必要がないという意味で用いており、SPHなどのいわゆるメッシュフリー法(粒子法)とは異なります。